2008年01月18日

一月の歌舞伎

eb9fc81f.jpg昨日は『壽 初春大歌舞伎』を観賞するべく歌舞伎座へ。さすがに初春らしく、(演目も含めて)歌舞伎座中が華やかなおめでたムードでワクワクします。私もちょいと気合いを入れ、明るい色の付下げなど着てみました。

さて演目は
一、鶴寿千歳(かくじゅせんざい)
二、連獅子(れんじし)
三、助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)

江戸文化究極の「粋」を表現した『助六』を、団十郎はハードにガチっと演じきりました。大げさな心理描写とかそういう女々しい事など軽々と乗り越え、繰り出される計算しつくされた美しい「型」の連続にウットリ。素晴らしいです。

あとですね、助六を観るといつも気になること。それは、強調され続ける、あの、股間であります。

常に必要以上に大股開きの出血大サービスで我々を悩殺しまくるあの赤い褌(ふんどし)。黒羽二重の紋付に博多帯というモノ・トーンを基調としたファッションに真っ赤な下着という色気が堪えられません。

因みに、あの四角いピラピラは褌ではなく「下がり」と言うやつで、舞台では形をきれいにするために下方の両端に五円玉などを入れ、上に上がらないようにしてあるんだと。

時代劇の立ち回りでも、股のあいだでヒラヒラする「下がり(白だよね、普通は)」にはなんとも言えない色気を感じます。「セクハラ」とか言うヤツは時代劇を観なくてもよろしい。パンツをはいたお侍なんて、想像するだに興ざめですよね。

※写真下はフンドシ王子(?)、阪東妻三郎の『雄呂血』  

Posted by mogimami at 21:40Comments(0)TrackBack(0)

2007年11月27日

今月の歌舞伎座

1b40219a.jpg25日(日)は「夜の部」千秋楽を見に歌舞伎座へ。
演目は

一、宮島のだんまり(一幕)
二、仮名手本忠臣蔵〜九段目 山科閑居〜(一幕)
三、土蜘(つちぐも)
四、三人吉三巴白浪 〜大川端庚申塚の場〜(一幕)

この中で一番面白かったのが「土蜘」で、内容はカンタンに言うと源頼光の妖怪土蜘蛛退治ス。

歌舞伎には「能」舞台を一般大衆向けに、派手で分かり易くしたものが色々あるんだけど、「土蜘」もそのパターン。能仕立ての舞踊劇となっとります。

スリリングな長唄にタイトでスピーディな展開、音もなく花道から現れる僧侶(実は土蜘の精)菊五郎の不気味さ、土蜘蛛の手から飛び出すモンキー・マジックな(スパイダーマンな、と、言うべきか・・)糸のスペクタクル。菊五郎は声がいいね。いや、ホント楽しかった。

ところで、ワタクシ恥ずかしながらこの「土蜘」の意味するところを知らなかったんだけど、「土蜘」とは七世紀末に大和朝廷に抵抗し、抑圧された先住民の蔑称なんだと。

我を知らずや 其の昔
葛城山に年経りし 土蜘の精魂なり
此の日の本に天照らす 伊勢の神風吹かざらば
我が眷族の蜘蛛群がり 六十余州へ巣を張りて
疾くに魔界となさんもの


天皇め、お前らがいなけりゃオレらが繁栄していたのに。虐殺の恨みを思い知れ〜!と抑圧された民の怨念が呪詛を唱えるワケですね。

最終的には退治されちゃう土蜘蛛だけど、頼光よりも断然カッコイイ。
ダークサイド万歳!ルーク・スカイウォーカーよりダース・ベイダーの方がセクシィなのだ。


(写真はワタクシ。真っ赤な道行は母が若い頃よく着ていたもの。好きだったので貰って嬉しや。しかし、袖丈が着物と合っていない!ダサっ!)
  
Posted by mogimami at 22:08Comments(0)TrackBack(0)

2007年02月13日

二月大歌舞伎 その1

76427bd8.jpg昨日は「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」の前半部分(「大序」「三段目」「四段目」「道行」)」を観に歌舞伎座「昼の部」へ。

みなさんご存じの「忠臣蔵」では吉良上野介による浅野内匠頭への嫌がらせが刃傷の理由となっていますが、「仮名手本忠臣蔵」では高師直(つまり吉良上野介)はそもそも桃井若狭之助(別の勅使饗応役)に対して含む所があったという設定です。

これに危険を感じた若狭之助の家老が莫大な賄賂を師直へ贈った為、師直は若狭之助に詫びを入れ、その腹いせを塩冶判官(つまり浅野内匠頭)に向けます。

更に、言い寄っていた塩冶判官の妻・顔世御前にもフラれて頭にきた師直は塩冶判官に罵詈雑言を浴びせかけるんス。最初はそんな悪態をこらえていた塩冶判官ですが遂に堪えかねて刃傷へ。

この部分、「忠臣蔵」では度重なる吉良のイジメに対して遂に内匠頭がブチ切れるのは自然なんだけど、「仮名手本」では何故師直が突然自分を攻撃するのか塩冶判官にはサッパリ心当たりがないワケで、そこから急に刃傷に及ぶってのに何となく納得いかなかったなぁ。こういう演じ方なのかしら。

確かに「鮒侍!」とメチャクチャなじられてたし、武士は自分の落ち度で恥をかいたら切腹、他人に恥をかかされたらその相手を切らなきゃならないワケですが・・。富十郎の師直が憎々しいと言うよりはバカみたいだったからか、菊五郎の塩冶判官に激情を感じられなかったからか。いつか他のキャストでも観てみたいッス。

大星由良之介(つまり大石内蔵助)は「昼の部」が幸四郎で「夜の部」が吉右衛門。七段目「祇園一力茶屋の場」の大星はぜひ吉右衛門か仁左衛門で観たかったので楽しみ。この続き、「夜の部」は15日に観に行く予定。
  
Posted by mogimami at 22:10Comments(0)TrackBack(0)

2005年06月22日

義仲最期

bc1ae63d.jpgNHK大河ドラマ『義経』もいよいよ佳境に入り、来週は遂に木曽義仲討伐です。ううっ。好きなキャラなので寂しいなぁ。

歌舞伎には義仲の父である木曽義賢の最期を描いた『義賢最期』と言う演目があります。『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』の一幕なんですけど、私はこれを片岡仁左衛門で観ました。

義賢は兄義朝が平家に討たれた後降伏して屋敷に引きこもっていたのですが、源氏の白旗の詮議だのなんだのまぁ色々あってですね、平清盛の使いに、義朝の首を踏んづけて身の潔白を証明しろと迫られるんです。

んな事できるかと義賢は使いをブチ殺す。で、怒って押し寄せて来た平家の軍勢を一人で迎え撃って壮絶な最期を遂げます。

この演目はすごーくアクション度が高くて、甲冑を着けずに様々なカタを披露するのが見所。戸板を二枚立てた上に一枚戸板を渡して、そこに立って見得を切り着地する「戸板倒し」とか、階段の上で前向きにバタっと倒れる「仏倒れ」を披露してそのまま階段落ちとか、ハラハラどきどきのアクロバティックな技が繰り出されるのです。勿論それらはスタントじゃなくて、義賢役本人がやるんスよ。嗚呼、仁左さまお顔に気をつけて〜!

『義経』に話し戻すと私のお気に入りは平知盛(阿部寛)と平知康(草刈正雄)かな。で、一番恐ろしいのは夏木マリですね。なんであの人は髪ボサボサなのよ?
  
Posted by mogimami at 11:48Comments(6)TrackBack(0)

2005年06月19日

6月大歌舞伎 長文でやんす

3d8850f3.jpg昨日は久しぶりに六月大歌舞伎「夜の部」を観に歌舞伎座へ。

「通し狂言 盟三五大切」
生誕250年の鶴屋南北作品。彼の代表作「東海道四谷怪談」と同じくこの演目も忠臣蔵外伝で、かなりグロイ話。南北ってもしかして変態?
しかし色んなアイテムが巧くちりばめられているし、ストーリーはメリハリがあってスピーディ。エンタテイメント性の強い作品です。

今回は仁左衛門と吉右衛門がどちらも主役級の役柄で共演しているんですが、これはもう先発がランディ・ジョンソンでリリーフにロジャー・クレメンスが出てくる試合みたいなもんです。全く雰囲気は違うけど、どちらも独特の色気を持った役者ですから見ごたえありますねー。

悪人じゃないんだけど、お調子者で狡すっからい色男の江戸っ子を仁左衛門が軽快に演じていて、彼はこう言う役が実に良く似合います。私も貢ぎたくなる男っぷりです。

一方の源五郎を演じる吉右衛門は、出だしは三五郎(仁左衛門)の妻で芸者のお六(時蔵)に入れあげて、彼らに金を巻きあげられる世間知らずで気弱な浪人なんですが、大事な百両を騙し取られてからは、湖の底みたいに静かでヌルっとした狂気を身にまとうようになります。その変化の表現はさすが。

結局吉右衛門は芸者のお六を斬殺するんだけど、この殺しの場が凄惨。終始スローモーションです。ペキンパーです。流れるような動作からビシッと決まる計算され尽くした美しいポーズ。いよっ!播磨屋!

しかしいくら騙されて男のプライドをずたずたにされたからって、女を追いまわして何度も切りつけて、髪をひっつかみ刀を高々と掲げて見得。これに大拍手って冷静に考えるとヒドイかもね(笑。そこが歌舞伎の醍醐味なワケですが。

役柄の利もありますが、今回は我らが仁左さまは吉右衛門にちょっと食われてたかも。

「良寛と子守り」
これは舞踊劇なんですけどね、ヒドすぎます。
1歳9ヶ月の富十郎の娘が初お目見えってのが売りらしいが、しょせんは赤ちゃん。舞台袖を何度も出たり入ったり、踊りの間もきょろきょろウロウロ。ものすごーくイライラしました。競馬に例えると早々に騎手が落馬したカラ馬が、自分が大金賭けている有力馬にいつまでも絡んでいる状況。ゴラァ!どけーっ!!

最低限じっとしていることすら出来ない子供を舞台に出すのは辞めて欲しいです。富十郎ボケてんじゃねーか?わたしゃ他の観客の方のように「かわいいーー!」なんて気には全然なれなかったですね、チケット代いくら払ってると思ってんだ!

「教草吉原雀」
長唄の名曲で知られる風俗舞踊。やっぱり折角歌舞伎座に来たんだから、歌や演奏も聴きたいし、煌びやかな舞台も観たいもの。富十郎のボケぶりにササクレだった心を優しく解きほぐしてくれました。

  
Posted by mogimami at 08:10Comments(10)TrackBack(0)

2005年03月30日

奢れる平家祟られる

13c62c1e.jpgNHK大河ドラマ『義経』見てますか?
2週前あたりで「鹿ヶ谷事件」をやっていましたね。

これは後白河法皇の側近である俊寛僧都の山荘で、打倒平家の密議を行った事が発覚した事件です。この事件で俊寛僧都、丹波少将成経、平判官康頼の3人が九州の「鬼界ヶ島」に流されますが、後に丹波少将と平判官は許されて都に帰るも、俊寛だけは許されず一人鬼界ヶ島でその生涯を終えます。

この話は歌舞伎でも有名でして、人形浄瑠璃に書かれた近松門左衛門作『平家女護島(へいけにょごのしま)』の二段目『鬼界ヶ島の場』通称『俊寛』として、頻繁に上演されています(今月も松本幸四郎が演じてました)。

歌舞伎の方は平家物語とはちょっと違った話になっていて、最初は3人とも都に帰る事が許されます。
で、丹波少将が地元の海女で恋人の千鳥も一緒に連れて行こうとしたところ、赦免使は「ダメダメ!3人って言われてるんだからさ。」とこれを拒否。

すったもんだの末俊寛が赦免使のひとりをブチ殺し、罪を犯した自分が島に残るから代わりに千鳥を乗せて行ってくれって事で落着するわけです。俊寛は都に残してきた家族が平清盛に殺されたと聞いて、ガックシきちゃってもうイイやって感じにもなってたんですね。

離れて行く船を追いかけて、その姿が見えなくなるまで手を振る俊寛の壮絶なラストシーンが見所。
私は過去3回(吉右衛門、仁左衛門、勘九郎)この「俊寛」を見ましたが、どーもあまり好きになれないんですよ。見た目も話しも悲惨だし、そもそも丹波少将と千鳥が島に残ればすむ話しじゃん。

因みに現在ではこの二段目以外が上演される事は無いようですが、四段目では千鳥が、厳島で海に突き落とされた後白河法皇を助けた為、清盛に殺されるらしいです。で、俊寛の妻(故人)と結託して怨霊となって清盛に祟り、清盛は熱病で死ぬそうな。

イ〜ネッ!そこまでやってくれたら楽しいんだけどなー。

  
Posted by mogimami at 12:13Comments(6)TrackBack(0)

2005年02月25日

義経と弁慶

3289f03d.jpg何十年ぶりかにNHK大河ドラマ「義経」を毎週見ています。
タッキーも頑張ってますし、有名な弁慶との五条橋でのシーンはなかなか美しかった。

義経と弁慶と言えば最も有名な歌舞伎の演目「勧進帳」が思い出されます。

「勧進帳」は兄頼朝と仲が悪くなってしまった義経が、弁慶らわずかな家来とともに、平泉の藤原氏のもとへと落ちて行く途中、彼らを捕らえようと頼朝が設けた関所での様子を描いた作品です。

一行は山伏に化けて関所を通過しようと試みるも、関所を守る富樫左衛門はこの情報を知っていたので、一行を怪しんで通しません。
そこで弁慶は何も書いていない巻物を勧進帳(お寺への寄付を訴える嘆願書)と見せかけて読み上げるわけです。

これを信じて一旦は彼らを通そうとする富樫ですが、変装している山伏の中に義経に似た者がいる、と家来が訴えた為「山伏たち、待て」と呼び止めます。絶体絶命!

そこで弁慶はバレないように、さも相手が小者であるかの如く「お前が遅いから疑われるんだ!」と義経を持っていた棒で強く打ち据えるわけです。これはもう本来なら主人を殴るなんてあり得ないワケでして、それを見た富樫は、弁慶の痛切な思いに感じ入って関所を通すのです。
富樫だって事が露見したら死罪ですからね。
お互い全て分かっているのに、口には出さず互いを思い合うって話しには弱い。
泣かせます。

因みにこの話し、富樫の「情」、弁慶の「知勇」、義経の「品位」ってのが日本男児の理想とされていると言われているそうです。

私は松本幸四郎と団十郎(多分)の弁慶を見た事があるのですが、是非一度中村吉右衛門の弁慶が見たいんです。一度TVで見たのですが素晴らしかったので。

  
Posted by mogimami at 13:00Comments(0)TrackBack(0)

2005年01月13日

この時期思い出す『雪暮夜入谷畦道』

2d309520.jpg毎年お正月に浅草公会堂で行われる「新春浅草歌舞伎」のコラムが今朝の朝日新聞に載ってましたね。この公演は若手中心のもので、私は橋之助、染五郎、八十助などが出演した平成4年の公演を見ましたが、印象深かった演目は河竹黙阿弥の作品『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』でした。

御家人くずれのお尋ね者「直侍(なおざむらい)」が逃亡前に雪の中、遊女「三千歳(みつとせ)」に別れを告げに行く物語で、なんちゅーかもぅ、たまらん話しなのです。
忘れもしないのが歌舞伎座で見た仁左衛門(直侍)と玉三郎(三千歳)のヴァージョンで、それはそれは目もくらむような美しさでした。

見所のひとつはオープニング、直侍の蕎麦屋での一連の動作です。
蕎麦屋に入るなり「天で一本つけてくれ」と直侍。亭主が「天は山(売り切れ)になりました」と言うと、直侍は「なければただのかけでいい」と言って着物をはしょり股火鉢。
お膳が出たらまずお猪口にお酒をつぐ。そいで、浮いているごみを箸でチョイっとよけて飲むんですね(松島屋!)。蕎麦もつゆをちょっと付けてスルスルっと粋に食べる。
いやもうカッコイイったら。

三千歳のセリフ「一日逢わねば千日の、想いにわたしゃぁ患ろうて 、鍼や薬の験さえ、泣きの涙に紙濡らし、枕に結ぶ夢覚めて、いとど思いのます鏡」ってのも泣かせます。

そしてラスト。逢瀬に踏み込んで来た役人から逃れて直侍が叫びます。
「三千歳!この世じゃ二度と会わねえぜ」

う〜ん、スバラシイ!日本人に生まれて良かった〜。

  
Posted by mogimami at 16:01Comments(0)TrackBack(0)