『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ著/土屋政雄訳
優秀な「介護人」キャシー・Hが一人称で語る青春の日々と残酷な運命の物語。
カズオ・イシグロの作品ってのはまず作家としての能力の高さに感嘆せずにはいられないス。作品を「読む事」自体に喜びを感じるんだなぁ。
さて、内容については社会問題としてのアプローチもチラッと考えたけど敢えてスルー。作者の意図とは違うかもしれないけど、非常に個人的な受け止め方をしたので、かなり胸に迫りました。
萩尾望都著『ポーの一族』でアランが言うところの「創るものもなく 生み出すものもなく うつるつぎの世代にたくす遺産もなく 長いときをなぜこうして生きているのか」そんな疑問。
近年はとにかく何事においてもリアリティを感じないんですね、私。んで、「記憶」というあやふやで、厳密には誰とも共有できないものだけがただただ澱のようにたまってゆくワケで。『ブレード・ランナー』でルドガー・ハウアーが最後に言った「全ての瞬間は時が来れば失われる、雨の中の涙のように。」なんていう台詞が読んでいる間中何度も去来しました。
『わたしを離さないで』を読んでいない人にはナンノコトヤラ?だと思うけど、この作品は「ネタバレ禁止」だと思うので。