2006年07月05日

女殺し

76810b27.jpg『女殺し油地獄(49年)』(監督:野淵昶/撮影:宮川一夫/出演:阪東好太郎、志村喬、日高澄子 他)

『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』と言えば近松門左衛門作の人形浄瑠璃。

油屋の放蕩息子である与兵衛は借金まみれ。勘当された上に翌日までに借金を返済しなければ手が後ろに回る事となる。最後の頼みに普段なにかと優しくしてくれる同じく油屋の女房お吉にお金を借りに行くも断られ、カッとなって懐にしまっていた短剣でお吉を惨殺してしまうのだ。

本作は歌舞伎でも度々上演されていて、私は仁左衛門&雀右衛門と染五郎&孝太郎のヴァージョンを観たことがあります。

見所はクライマックスの殺しの場でして、一件落着かと思いきや(両親がこっそり預けた金を一旦受け取り感謝、がしかし、足りなかったんだな)与兵衛が豹変。床にこぼれた油がツルツルとすべり、組つ解れつ油まみれになりながら与兵衛が執拗にお吉に斬りつけるんですね。この暴力シーンは例によってスローモーション、ペキンパーなワケでして、正気から狂気へ一線を越える部分の表現に役者の力量が試されるスリリングな演目です。

さて、映画の方ですが・・・ これは、
全然違うーーーーーーーーっ!!

大阪所払いとなった金貸し屋の主人与兵衛と油屋の一人娘お吉の恋物語になっとる!しかも女殺し、意味違うし。最後はハッピーエンド。そんなバカな・・

相変わらず「明かり」の美しさには目を奪われるんですけど、殺しのシーンを宮川一夫がどう撮影するのか楽しみに観ていたもんで、肩すかしでした。チェッ!


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