2005年06月19日

6月大歌舞伎 長文でやんす

3d8850f3.jpg昨日は久しぶりに六月大歌舞伎「夜の部」を観に歌舞伎座へ。

「通し狂言 盟三五大切」
生誕250年の鶴屋南北作品。彼の代表作「東海道四谷怪談」と同じくこの演目も忠臣蔵外伝で、かなりグロイ話。南北ってもしかして変態?
しかし色んなアイテムが巧くちりばめられているし、ストーリーはメリハリがあってスピーディ。エンタテイメント性の強い作品です。

今回は仁左衛門と吉右衛門がどちらも主役級の役柄で共演しているんですが、これはもう先発がランディ・ジョンソンでリリーフにロジャー・クレメンスが出てくる試合みたいなもんです。全く雰囲気は違うけど、どちらも独特の色気を持った役者ですから見ごたえありますねー。

悪人じゃないんだけど、お調子者で狡すっからい色男の江戸っ子を仁左衛門が軽快に演じていて、彼はこう言う役が実に良く似合います。私も貢ぎたくなる男っぷりです。

一方の源五郎を演じる吉右衛門は、出だしは三五郎(仁左衛門)の妻で芸者のお六(時蔵)に入れあげて、彼らに金を巻きあげられる世間知らずで気弱な浪人なんですが、大事な百両を騙し取られてからは、湖の底みたいに静かでヌルっとした狂気を身にまとうようになります。その変化の表現はさすが。

結局吉右衛門は芸者のお六を斬殺するんだけど、この殺しの場が凄惨。終始スローモーションです。ペキンパーです。流れるような動作からビシッと決まる計算され尽くした美しいポーズ。いよっ!播磨屋!

しかしいくら騙されて男のプライドをずたずたにされたからって、女を追いまわして何度も切りつけて、髪をひっつかみ刀を高々と掲げて見得。これに大拍手って冷静に考えるとヒドイかもね(笑。そこが歌舞伎の醍醐味なワケですが。

役柄の利もありますが、今回は我らが仁左さまは吉右衛門にちょっと食われてたかも。

「良寛と子守り」
これは舞踊劇なんですけどね、ヒドすぎます。
1歳9ヶ月の富十郎の娘が初お目見えってのが売りらしいが、しょせんは赤ちゃん。舞台袖を何度も出たり入ったり、踊りの間もきょろきょろウロウロ。ものすごーくイライラしました。競馬に例えると早々に騎手が落馬したカラ馬が、自分が大金賭けている有力馬にいつまでも絡んでいる状況。ゴラァ!どけーっ!!

最低限じっとしていることすら出来ない子供を舞台に出すのは辞めて欲しいです。富十郎ボケてんじゃねーか?わたしゃ他の観客の方のように「かわいいーー!」なんて気には全然なれなかったですね、チケット代いくら払ってると思ってんだ!

「教草吉原雀」
長唄の名曲で知られる風俗舞踊。やっぱり折角歌舞伎座に来たんだから、歌や演奏も聴きたいし、煌びやかな舞台も観たいもの。富十郎のボケぶりにササクレだった心を優しく解きほぐしてくれました。



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この記事へのコメント
歌舞伎は一度も見たことのない野はらです。
仁左衛門は、TVでちょろりと見るくらいですが、線の細い優男風ですよね。
吉右衛門はもう「鬼平…」のイメージがドカッと強いです。
確かにどちらも色気がありますね。
で、お怒りの初舞台ですけど、セッティングに無理がありすぎですよね。
1歳9ヶ月なんて、そこらの犬の方がまだ良く言うことを聞くと思います。
ただ、失礼千万な想像ですけど、我が娘の七五三を
「ひいばあちゃん(今年1月に他界)が元気なうちに」と急いで準備したのを
なんとな〜く思い出してしまいました。
Posted by 野はら at 2005年06月19日 16:04
こんばんわ!
「盟三五大切」って見たこと無いのですが、
殺しの場面を伺って、ハッキリ情景が浮かんできます。
「東海道四谷怪談」は、去年の歌舞伎座で見ました。
鶴屋南北ってそうゆう作家なんですね。

それから、富十郎の孫。
きっと、僕もイライラしてると思う。「かわいい〜」ってぇのは、子供ながらにも頑張ってる姿を見て言えること、かな。
Posted by cafenoir at 2005年06月19日 23:47
黒猫さんのブログ見ないで、私のも書いたんだけど殆どかっぶってます(笑)。こういう演目こそ、歌舞伎の醍醐味。大向さんになって「松島屋っ!」って声かけたくなりますね。
Posted by 則猫 at 2005年06月20日 01:27
追記:
執拗に二人を捜し出して、復讐するところや、お六を惨殺するシーンは、源五兵衛の恨みや嫉妬が、うまく表現されてますよね。赤子を殺すところも、裏切られた気持ちの根深さというか。とにかく「ものすごく口惜しい」カンジが伝わってきました。
迫力ありましたね。
Posted by 則猫 at 2005年06月20日 10:48
>野はらさん
仁左さまは舞台で観るとTVよか格段と男っぷりがいいんですよ〜。是非一度機会があったら観てください。

>「元気なうちに」
これはあると思います。富十郎も年ですから。って言う70過ぎてからの子供ってどういう感覚なんでしょう?

>cafenoirさん
「盟三五大切」のスピード感は凄く現代的だと思いました。仕掛けが上手いので、くどくど話す手間が省かれている気がします。

>子供ながらにも頑張ってる姿
そうなんですよね。今まで何度も初お目見えの幼い舞台は観て来ましたが、今回ほど未調教なのは初めてです。しかも出番が長い。一緒に出演している他の子供達も可哀想だと思います。女の子だから跡取りでもないワケだし・・。

Posted by 黒猫クロマティ at 2005年06月20日 11:46
>則猫さん
子供を殺すシーンで、となりのオバサンが「いやーっ!」と小さく叫びました。かなりヒドイよね。

私は「殺ってやる」と決めてからの源五郎の冴えた落ち着きぶりが怖かったです。バラバラ殺人の犯人って、意外と冷静に死体を切り刻むって話しを聞いた事があるけど、その静かな狂気っつーか、暗黒面にイッチャッタ「冷血(コールド・ブラッド)」ぶりにゾっとさせられました。くわばらくわばら。
Posted by 黒猫クロマティ at 2005年06月20日 15:30
自分は歌舞伎見たこと無いんですが、ちょっと今年中には必ず見に行こうと思います。
この手の古典芸能ってのはウカウカしてると『時既に遅し』で地団駄踏むことになりそうなので・・・。
仁左衛門は病み上がりの時?にテレビのワイドショーかなんかで会見してたので名前を知ったのかな。
男から見てもイイオトコだと思いましたよ。

乙な黒猫さんのことだから歌舞伎(&銀ブラ?)なんかに行くときには、ドレスアップされていくんすか?
Posted by カルアル at 2005年06月20日 19:59
>カルアルさん
>病み上がりの時
あー、あの病気の時はホントに死んじゃうんじゃないかとハラハラしました。復帰後の初演目「お祭り」を見と時にゃぁ涙々でした。
>今年中には必ず見に行こうと
是非々見に行ってください!

歌舞伎に行く時はドレスアップって程でもないけど、一応よそ行きの服装で出掛けます。あのような場って、そう言うこだわりを持ちたい気がして。
Posted by 黒猫クロマティ at 2005年06月21日 11:20
>最低限じっとしていることすら出来ない子供を舞台に出すのは辞めて欲しいです。富十郎ボケてんじゃねーか?わたしゃ他の観客の方のように「かわいいーー!」なんて気には全然なれなかったですね、チケット代いくら払ってると思ってんだ!

あはははは!!オフィスで声を出して笑っちゃいました!
黒猫クロマティさんの歯に衣着せぬコメント、最高ですっ!
歌舞伎好きはそうでなくちゃねぇ〜。

鰻屋情報、有難うございます♪
事後報告ですが、リンクさせていただきました。
Posted by 文字若 at 2005年07月21日 15:06
>文字若さん
ようこそお越しくださいました!いや〜ん、嬉しいッス。
実は文字若さんさんのブログもこっそり拝見しておりました。
特に「陸軍銀座学校」は書き込もうかどうしようか迷ったのですケド・・。

文字若さんに比べれば歌舞伎の知識はかなり怪しい黒猫ですけど、どうぞ今後ともご贔屓にお願いします!

私の方でもリンクさせて頂きました。

あ〜美味い鰻、食べたいッスね〜。

Posted by 黒猫クロマティ at 2005年07月21日 15:47