2005年10月27日

ヴェンダースはイメージ通りの黒いコートを羽織って登場した

d38d920d.jpg『ランド・オブ・プレンティ』(監督:ヴィム・ヴェンダース、出演:ミシェル・ウィリアムズ、ジョン・ディール、 リチャード・エドソン)

昨日観て来たのですが、上映後にヴィム・ヴェンダース監督による舞台挨拶&ティーチ・インがありまして、現在生きている映画監督の中では私にとって一番思い入れのある同監督を間近に見て、その話を聞けるなんて全く夢のような一夜で終始ドキドキしっぱなしでした。

さて映画についてですが、ヴェトナム戦争の後遺症を引きずるポールはテロリストから自分の力で国を守るべく、盗聴器やカメラをバンに積んで町をパトロールするパラノイア気味の男。ある日アフリカやイスラエルで育ったラナが10年ぶりに帰国し、亡き母の手紙を携えて伯父である彼のもとにやってくる。そんな二人の交流と9.11について描かれた物語で、町の暴力を見張るポールの姿に『エンド・オブ・バイオレンス』を思い出しました。町を見守るのは『ベルリン、天使の詩』でも同じですが、そこに暮らす人々の声を聴く天使と違って、ポールは自分の声しか聞こえない。悪夢に苦しむ被害妄想の国アメリカ。

また、旅のシーンは『都会のアリス』。リュディガー・フォーグラーがアメリカをポラに収めて移動して行く、あの時彼が観たアメリカとラナやポールが見るアメリカとの違い。クルマの外ではためく国旗のアングルは『さすらい』かな。トロナは『パリ、テキサス』で、ラナが屋上で踊るシーン(写真)はジャームッシュの『パーマネント・バケーション』?そしてそのバックに見える『ミリオンダラー・ホテル』の看板。

そんなヴェンダース的要素はふんだんに盛り込まれているにも関わらず、全然ヴェンダースっぽくない「絵」にはちょっとガッカリしました。今回の作品はヴェンダース言うところの「ハリウッドなら弁当代にもならない低予算」で制作されたもので、16日間と言う驚異のハイスピードで、殆どがハンドカメラを使用して撮影されたもの。スタッフもキャリアの浅い若者が多く、撮影監督にとっては初の長編作品だとか。

それ故に得た自由で、ヴェンダースにしてはかなり政治的なこの作品を撮ったと言うワケです。彼曰く「自分はマイケル・ムーアのような才能はないので、家族の問題を描く事によって間違った方向に進んで行くアメリカに物申したかった。」との事。

そう言う姿勢は支持するし、彼にとってこの映画を撮る必要があったのだと言う事も分かる気がするけど、純粋に作品とし観た時どうも繋ぎがぎこちなくて雑な印象を受けてしまう。ハンドカメラも疲れるし、音楽の使い方も唐突。『都市とモードのビデオノート』のような実験的面白さがあるワケでもないし、観ていて正直あまり楽しめなかったス。

少なくとも「『パリ、テキサス』以来の最高傑作」とか言う宣伝文句はどうかと思うなぁ。番外編的な作品として楽しんだ方がいいんじゃない?
あとですね、「アラブ系ホームレス」って表現がチラシに使われているけど、パキスタン人じゃん。パキスタンは全然「アラブ系」じゃないゾ、アスミック・エース!  

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2005年10月19日

ゴメン、愚痴らせて

c55cfa61.jpgロッテとホークスのプレーオフ、盛り上がりましたね〜。ロッテファンの皆さまはオメデトウございます!日本シリーズなんかもういいかって感じじゃないですか?

ただ、ロッテのあの応援、私には拷問ッス。精神的にもの凄く疲れました。

野球と言うゲームは全てがセットプレイなのがミソ。球場に行くと良く分かるんですがプレイヤーもファンも様々な予測をする時間があって、その後ピッチャーが胸元にグラブを構えた瞬間に全てのプレイがピタっと静止、ボールが手から放れると同時に球場全体が動き出すのが醍醐味だと私は思うんです。

ひとつひとつのプレイに対する自然な歓声や松中の打席に期待する割れんばかりの声援には私も昂揚したけど、飛び跳ねながら自分たちの歌を歌う事に夢中でどんなプレイがフィールドで繰り広げられていようとおかまいなしの応援には不快感を覚えます。こっちの野球を見るリズムが崩されてしまう。みんなが決められた同じ動作を繰り返すのも不気味。

とは言え興行としては大成功で、実際ロッテは強くなって31年ぶりに優勝したわけだし、ファンがもの凄く楽しんでるのも良く分かるッス。だから別にいいんです。私が彼らの試合を見なけりゃ良いだけの話しで。

ただ、ロッテの応援を真似する巨人応援団にはウンザリ。この先どこの球場でもロッテ式応援が繰り広げられる日が来るとしたら私は大好きな野球を見ることができなくなるので、それだけは勘弁してね。
  
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2005年10月17日

公開予定の気になる映画たち

d7b87381.jpg『アメリカ、家族のいる風景』
監督:ヴィム・ヴェンダース/脚本:サム・シェパード
出演:サム・シェパード、ジェシカ・ラング/音楽:T・ボーン・バネット

落ちぶれた老俳優が人生の空白を埋めようと、まだ見ぬ自分の子供を探して彷徨う話し。
『パリ、テキサス』以来のヴェンダース/シェパード・コンビ!その上この絵の感じでは期待するなってのが無理です。2006年陽春ロードショー。

『ランド・オブ・プレンティ』
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース/出演:ミシェル・ウィリアムズ

ヴェンダースをもう一発。こちらは今週末公開です。
アフリカ、イスラエルで育った少女ラナが10年ぶりにアメリカに帰国。アラブ系ホームレスが殺される現場に居合わせた彼女と伯父ポールは、遺体を届けるためにアメリカ横断の旅に出る・・・。
レナード・コーエン、トム&ナクト、トラヴィスなどが参加したサントラが気になる!

『Shane[シェイン] THE POGUES:堕ちた天使の詩』
出演:シェイン・マガウァン、ニック・ケイヴ、ジョニー・デップ、シニード・オコナー

ザ・ポーグスのフロントマンだったシェイン・マガウアンの半生を描いたドキュメンタリー。
ポーグスはやっぱシェインがヴォーカルの時が良かったよね、パンクで。
因みに私は2度彼らのライヴを観たことあるんですが、1度目はシェインがヴォーカルで、噂通り酔っ払っててグチャグチャなステージでした。2度目に観た時のヴォーカルは故ジョー・ストラマーだったんだなぁ。パンクスのキミは必見?!10月29日(土)よりレイト・ロードショー。

『裁かるるジャンヌ』
監督:カール・ドライヤー/出演:ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ

ノルウェーで発見されたオリジナル・プリントを使用したDVDの発売記念として、アテネ・フランセ文化センターで11月29日上映されるようです。柳下美恵のピアノ伴奏付き。

『ベロニカは死ぬことにした』
監督:堀江慶/出演:真木よう子、イ・ワン、市村正親、風吹ジュン/音楽:アンドレア・モリコーネ

自殺未遂の主人公が入院したサナトリウムで自分を見つける話し。パウロ・コエーリョの同名小説が原作なんだけど、この原作が好きなのでちょっと気になります。
2006年陽春ロードショー。  
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2005年10月14日

『亀も空を飛ぶ』

2392608a.jpg『亀も空を飛ぶ』(監督:バフマン・ゴバディ)

イラン出身のクルド人であるバフマン・ゴバディ監督の最新作でアメリカのイラク侵攻直前、トルコ国境近くのクルド人集落で暮らす子供達の姿が描かれた作品。

登場するのは老人と子供ばかりで、必然的に幼い子供達が大人の役割を担う事になります。と言っても、いたる所に地雷が埋まり難民が溢れる村で得る僅かばかりの現金収入は、地雷を集めて売りさばくというキケンな作業によって得られるもの。

腕や脚の無い子供、テントでの難民生活、機関銃、戦車、地雷。それが彼らの日常なのだと言うことにもの凄く説得力があるのは、その目線が「生きる事と死ぬ事」と言う、人間なら誰しも馴染みがある事実に据えられているからでしょうか。同じ人生なのに彼らが背負う重荷はあまりに重く、流す涙は私なんかが流す感傷の涙とは全然まったく種類が違う。強くて凛とした彼らの姿は神々しくさえありました。

こんな風に書くと、コチコチの社会的映画か芸術映画か、何にしても面倒くさそうだと思われる方もおられるかもしれませんが、「映画」としての見せ方も凄く良くできていて、同監督の傑作『酔っぱらった馬の時間』よりも見やすいかもと思うので、普段この手の映画を敬遠されている方にも観て欲しいッス。

人生は苦労ばかり/子供ですら老いてゆく/
険しい山を越え/深い谷を巡るつらい仕事が僕らを死へ導くよ/
人生は苦労ばかり/子供ですら老いてゆく/
厳しい毎日が僕らの若さを奪う
(『酔っぱらった馬の時間』より)

  
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2005年10月11日

季節はずれですが

0821a50d.jpg『鰯雲(58年)』(監督:成瀬巳喜男、出演:淡島千景、木村功、中村鴈治郎、小林桂樹)

東京近郊の農家を舞台にした物語。昔は大地主だったけど農地改革で多くの田畑を失い、それでも尚昔ながらの生活を守ろうとする家長(中村鴈治郎)と、新しい生き方を選ぶ子供達。その間を取り持つ家長の妹である戦争未亡人(淡島千景)と彼女の恋などが描かれた作品。

俳優達がどうも農民に見えない・・・つーか、銀座の女と旦那衆に見えてしまうのは、最近成瀬映画を続けて観ているせいでしょうか?実際「農家ってそんなんじゃない」と公開当時批判もあったようですが、私はこの作品好きです。

登場人物が多くて、その一人々に様々なドラマがあるにも関わらず、話が混乱しないし全然散漫にならない。実にスムーズに、時代の流れによって変化してゆく人間の意識や生活が描かれていて、そこんところにひたすら感心しました。

牛を使って農作業をする鴈治郎達の傍らを、普段私も良く使う小田急と思わしき電車が通り過ぎて行くシーンも感慨深かったなぁ。
そして、ある時は田中絹代だったり高峰秀子だったりするように、今回は淡島千景の地に足のついた強さを感じさせるラストシーンもステキでした。  
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2005年10月04日

祝・『市川雷蔵時代劇全仕事』放映スタート!

babfd7be.jpg9月末から時代劇専門CHで「市川雷蔵時代劇全仕事」と言う企画がスタートしましてね、毎週日曜の正午に雷蔵映画が放映されているのです。3年位かかるみたいだけど雷蔵出演映画全158作品中、130作品も制覇できてしまうと言うシアワセ!嗚呼、夢なら醒めないで!

と言うわけで、企画第2弾(1弾は『薄桜記』でした)『昨日消えた男(64年)』(監督:森一生、脚本:小国英雄、出演:市川雷蔵、高田美和、藤村志保、宇津井健)を観ました。

ヒマを持て余した八代将軍吉宗(雷蔵)は、謎解きの趣味が高じて実際の事件を解決してみたいと大岡越前守に頼み、同心に化けて市中へ。既に解決済みの事件をあてがわれるのだけど、お供から逃げて居酒屋で知り合った浪人(宇津井健)の長屋に居候を決め込む。ところがそこで次々と殺人が起きて・・・。

原作はダシール・ハメットなんですけど、これは凄く楽しいコメディ時代劇でした。雷蔵ってこう言うとぼけた役も合うんだよなー。チャンバラシーンもちゃんといいタイミングで配置されてるし、月夜の橋の上を走る御用提灯の波とか、「待ってました!」って感じです。

本作はマキノ正博監督、長谷川一夫・山田五十鈴出演で41年に制作された同名映画のリメイクで、オリジナルの長谷川一夫が演じるのは遠山の金さん。長屋の連続殺人と言う事以外はかなりアレンジされているようです。私はオリジナルを観ていないのですが、どうなんでしょう?やっぱリメイクは落ちるの?

  
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