2005年05月31日

ミステリー小説のヒーロー達 その1/シッド・ハレー

77910591.jpg金曜日のブログでふれた英国のミステリー作家ディック・フランシスですけど、元は競馬の騎手だった為その作品は全て競馬界を舞台に描かれています。なので、なんとなく敬遠してしまうと言う方も多い様子。

けど、競馬には全然興味なくても、ハードボイルド好きなら十分楽しめるのが彼の作品だと思います。中でも一番人気があるのが片手の探偵シッド・ハレーを主人公にした『大穴』(ディック・フランシス著 菊池光訳 ハヤカワ書房)。

障害レースのチャンピオン・ジョッキーだったシッド・ハレーはレース中に落馬負傷、片手が使えなくなり引退を余儀なくされます。その後競馬に関する事件を扱う探偵事務所の調査員として働くのですが、過去の栄光が忘れられず毎日が死んだような日々。ところが、ある事件に巻き込まれた事がきっかけでその人生が大きく変化して行くことに・・。

この作品の中で大好きなのが、シッドが引退した名馬に乗るシーン。人馬の気持ちが重なり合い、風の音や芝の匂いを感じてこちらの胸も高鳴ります。そんな想像力をかきたてる表現の巧さが魅力のひとつ。シッドが恐怖と痛みに耐えながらそれに打ち勝とうと闘う姿は手に汗握ります。

また、馬主、調教師、騎手、観客とそれぞれの立場を描く事によって、現在もイギリスに根強く残る階級制度が見えてくるのも面白い所。

因みにシッド・ハレーのシリーズはその後『利腕』『敵手』と3作が発表されています。興味がある方はこのシリーズをまず試してみると良いかもしれません。

  

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2005年05月27日

競馬映画『チャンピオンズ』

d77390e7.jpg今週末はいよいよダービーです。注目のディープインパクトは3枠5番に入りましたが、果たしてどんなレースを見せてくれるのか気になりますね。とにもかくにも無事走って欲しいと言うのが一番の願いですけど。

競馬関係の映画でちょっと印象に残っているのが『チャンピオンズ(84年)』(監督:ジョン・アーヴィン 出演:ジョン・ハート、他)と言う映画です。

癌の宣告を受けた花形騎手と骨折した名馬が共に立ち直り、イギリス最大の障害レースである「グランド・ナショナル大障害レース」に挑む実話の映画化です。

最大の見所はラストの1981年4月4日、グランド・ナショナルでのレースシーン。これは実際のレースを撮影しているらしいのですが、参加頭数は39頭(!)、7200メートル(!)のコースには30にも及ぶ大障害の柵。いやもう凄いのなんのって、こんなコト許されちゃうの?って位過酷なレースでして、可哀想な馬たちは溝にハマるは柵に衝突するはで次々脱落。えらい迫力でした。

「グランド・ナショナル」って競馬ミステリーで有名なディック・フランシスの作品にも良く出てくるレースですけど、一度は生で見てみたいッスね。

ただ、平地の18頭立てでも迷いに迷うのに、障害の39頭立てってどうやって馬券を買えばいいんだろう?

  
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2005年05月26日

「ジロ・デ・イタリア」放映開始

5a13600e.jpg現在有料放送の「スカイスポーツ3」で自転車ロードレース「ジロ・デ・イタリア」が放映されています。

ジロ・デ・イタリアは自転車ロードレースの世界最高峰であるグランツール(ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ヴエルタ・ア・エスパーニャ)のトップを切って行われるレースで、今年はジェノバのプロローグTT(タイムトライアル)でスタート。ティレニア海沿いにプーリア洲まで南下し、一旦飛んでアドリア海沿いに北上。スロベニアとクロアチアを経てアルプスステージへと至り最後はミラノを目指すという全3485Kmのコースとなります。

実際のレースは5月7日から始まっているのでそろそろ終わる頃ですが、スカイスポーツでは今日はお休みで明日が第5ステージ。生放送であるツール・ド・フランスに比べるとやっぱりモチベーション下がりますが、毎日2時間の放送(pm22:00〜と翌朝am7:30〜)なので、気軽に見ることが出来ると言う利点はあります。

ヨーロッパ好き、自転車好き、レース好き、贅肉がそぎ落とされた長い足の男好きのアナタは是非一度ご覧ください。

  
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2005年05月25日

過去だけど未来の文学

2f39da18.JPG『エンベディング』(イアン・ワトスン著)

本作は73年に発表されたイアン・ワトスンのデビュー作ですが、国書刊行会の「未来の文学」シリーズの一環として昨年再発されました。

複雑な情報の埋め込み(エンベディング)構造によって、新たな思想を持つ新たな言語を開発しようと、子供を使って怪しい研究をしている言語学者のソールは、その頃地球にやって来た異星人との交渉役を任されます。異星人は地球の言語構造を得るべく取引を申し出ているのです。一方、彼の旧友であるピエールはアマゾンの奥地に住むゼマホア族が持つ未知の言語を理解しようと、彼らと生活を共にしています。二つのストーリーはやがて絡み合い、行き着く先は・・・。

ドラッグやシャーマニズム、ベトナム戦争の後遺症などアイテムに時代を感じますが、この作品はどこまでマジメに捉えたらいいものやら。どーもギクシャクして読みにくいんですけど、何となくアホらしかったりする所がラブリーで楽しめます。

言語が人の思想を左右する事を前提に、言語をバラバラにして時間やら状況やらを同時に認識する事を可能にする事によって、全く新しい思想を生み出す事を目指す話しって感じでしょうか。

訳者の山形浩生さんが巻末に、ワトスンに対する愛なんだか批判なんだかの(多分、愛だろう)あとがきを書いているんですけど、コレが結構面白いです。あとがきの為に本文を我慢して読む価値があるかもしれないッスね。(笑)

因みにワトスンは90年にキューブリックのために『A.I.』の映画用ストーリーを執筆しています。

  
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2005年05月24日

アラーの神にもいわれはない

47b618ed.jpg『アラーの神にもいわれはないーある西アフリカ少年兵の物語』アマドゥ・クルマ著

読んだのは2年位前で実は他のサイトでも紹介した事があるのですが、しつこくこちらでも。

「もうこの世には、父さんも母さんも兄さんも姉さんも、だれもいないっていうのに、自分がまだチビ助だったらいったいどうするよ?
ひとが寄ってたかってたがいに喉を掻っ切ってるようないかれた野蛮な国に、かわいいチビ助がひとりぽっち残されたら、いったいそいつはどうすりゃいいのよ?

もちろんそいつは子ども兵になるのよ。食いものにありつくために、スモール・ソルジャーやらチャイルド・ソルジャーやらになるのよ。

そしてこんどはそいつにもお鉢がまわって、てめえがだれかの喉を掻っ切ることになるわけよ。いきつく先は、もうそれっきゃ残っちゃいねえんだ」(本文より)

少し前に「世界の危険な国ランキング」なるものを新聞で見ました。そこでは最も危険な国にイラクが選ばれていましたが、個人的にはアフリカ諸国なんじゃないかと思うんです。中東の石油のように実質的な利害関係が少ないからムシされているだけで・・。

本作は子ども兵の目から見たリベリア・シエラレオネの内紛を描いた物語。基本的にはフィクションであり語り口はユーモラスなんですが、その内容は想像を絶するこの世の地獄でして、安易に同情したり泣いたりする事さえ拒むような話しです。

少年の話し言葉をとても上手に訳している翻訳の真島一郎氏の功績も大。彼は巻末で西アフリカ情勢を丁寧に解説していて、こちらも読み応えがあります。


  
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2005年05月23日

今年も行ったよ、オークスに。

c3b54cc0.jpg昨日は3才牝馬限定レース「優駿牝馬(オークス)」を見に府中競馬場に行きました。

昨年も参加したのですが、牝馬のレースと言う事でJRA主催の女性向け懇親会ってヤツがありまして、このイベント、どうやらわりと年輩の作家やタレントを中心に招待されている様子。私は少女漫画家である友人に引っ付いて参加したのですが、メモリアルスタンド7Fの特別室で食べ放題、飲み放題。レース場全体が見通せるバルコニー席を陣取ってシャンパンなぞ飲みながらギャンブルを楽しむと言う贅沢なひとときを過ごしました。

さて、肝心のレースですがこの日の東京は固い決着が多くて、6Rからやってそこそこ勝つも儲からず。やがてメインのオークスへ。

レース前には競馬記者である原良馬さんの講釈などもあり。確かに原さんは素敵なおじさまで好きですけど、話は面白くない。そんな話は馬柱見りゃだれでも分かるっつーの!

懇親会には競馬初心者が多い。「今日はどのレースも牝馬しか出ないんですか?」などと言う寝ぼけた質問をするトーシローに、月曜日から競馬ブックを読んで馬券を検討している我々が負けるワケにはイカンのだ。3才のコギャルの人気なんて信用でけん。シーザリオ、アドマイヤメガミ、レースパイロットの3点ボックスで勝負だ!武もデザーモも切る!

と息巻いたものの、直前にシーザリオと武豊騎乗2番人気のエアメサイアの馬連を買い足したら、結局来やがったよ。しかも3着は3番人気のディアデラノビア。固い固い。ガチガチに固い。いやはや、最近のコギャルってのは凄いッス。参りました。

  
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2005年05月20日

祝・中年の☆工藤投手完投勝利!

2bd52fea.jpg昨夜、巨人の工藤投手が対ソフトバンク戦で完投勝利をあげました。42才での完投勝利はセ・リーグ最年長記録。子沢山で働き者の工藤投手は中年の鏡ッスね。
最終回はストライクが思うようにとれず、ノーアウト満塁のピンチを迎えるなどかなりアップアップの状態だったけど、それでも何とかやりくりできるところがさすがです。

ところで「巨人戦の視聴率低下」って記事を良く見かけるけど、それって当たり前じゃんって思うんです。だって、今までは他球団のファンでも野球を見たければ巨人戦を観るしかなかったワケですが、今や有料チャンネルで自らの贔屓球団を観られる時代。私も地上波は落ち着かないので、同じ中継なら有料チャンネルの方で観ています。

個人的には野球中継が完全に有料チャンネル放映になってもなんら問題無い、ちゅーか、むしろウェルカムなんですけど、それじゃあ将来的には野球がマイナースポーツになってしまうかも。戦前から日本に根付いているプロ野球と言うひとつの文化の為にはやはり地上波放送も必要かと。それには今までみたく巨人戦流しときゃイイやじゃなく、プロ野球機構も一緒になって放送のあり方を模索して欲しいッス。中継時間短縮なんて逆だっつーの!

だってさ、じゃあ野球中継の代わりに何やるのよ?お互いを罵倒し合ったり、占い師のオバサンの寝言を聞かされるバラエティ?それよか工藤投手が必死に自分と闘う姿を観る方が、得るモノがあると思うんです。


(写真は本文とは関係なく我が家で咲いたバラ達です)

  
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2005年05月19日

『陸軍中野学校』シリーズ

27cb7941.jpg『陸軍中野学校 密命(67年)』(監督:井上昭 出演:市川雷蔵 、野際陽子、加東大介、山形勲、他)

雷蔵が第二次世界大戦下のスパイに扮するシリーズの四作目。
このシリーズはこれまで『陸軍中野学校』『陸軍中野学校 雲一号指令』『陸軍中野学校 竜三号指令』と観てきたけれど、どうも何だかコッパズカシイと言うか、スパイってそんなんでイイんすか?だったのですが、この「密命」は面白かったです。

中国でスパイ活動に従事していた陸軍中野学校出身の陸軍中尉である雷蔵が、敵のスパイって事でいきなり逮捕されて拷問を受け、日本に強制送還される所から物語が始まります。その後色仕掛けで野際陽子に近づいたりして、結構な冷徹ぶりを発揮するんです。

このシリーズで私が面白いと思うのは、当時の日本の描き方だったりします。
日本が負け犬じゃない。非常に淡々と仕事しているって言うか、日本の戦争映画で敗戦の匂いがしない作品てのは珍しい気がします。
毎回新作品が出てくるスパイ道具(今回は火をつけると煙幕が出る煙草・笑)はちょっとどうよ?なんですけど。

あと、野際陽子がメチャきれい。ひんやりとしていて素敵です。



  
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2005年05月17日

『さらば青春の光』

33735ae3.jpg『さらば青春の光(79年)』(監督 : フランク・ロダム 出演:フィル・ダニエルス、他)

最近スカパーで繰り返し放映されているもんで、ついまた観てしまった。

ロック・バンド「ザ・フー」のアルバム「四重人格(Quadrophenia)」をベースにしたこの青春映画は、60年代半ばのイギリスを舞台に「モッズ族」と呼ばれた当時の若者の喧噪と挫折の日々を描いています。「モッズ(Mods)」とは「Moderns」の略。彼らの多くは労働者階級で、三つボタンにサイドベンツの細身のスーツを身につけて軍用パーカーを羽織り、派手にデコレイトしたベスパに乗ると言ったファンションが特徴。

ロックファンにはマストな映画として薦めてきたけれど、最近ロックとかモッズとかに関係なく純粋に青春映画として優れているんじゃないかと思うようになって来ました。

夜のロンドンを群れて走るベスパの爆音と共に「助けてくれ母さん!オレは狂ってる!」「ホントのオレが分かるかい?!」と歌われるオープニングの「The Real Me」を聞いた瞬間から、映画の中にとりこまれてしまいます。現実から目をそらし、安い給料を洋服とベスパと酒とドラッグに注ぎ込む若者達。毎日つるんでいるにも関わらず「友達」ですらない仲間達との空虚なパーティの日々。

やがて物語はブライトンビーチでの暴動でクライマックスを迎えますが、興奮が過ぎ去った後、何かを失って元の仲間に戻れなくなった主人公ジミーの苛立ちと混乱が、我が事のように思えていつも胸が痛くなるのです。

ジミーが仲間をリードする前半、暴動前夜の静かな興奮、暴力とセックス、そして喪失。ザ・フーの激しくも文学的な歌にのせて爆走するみじめな青春。

ロックファンだけのモノにしとくには惜しい映画かもしれないです。


  
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2005年05月16日

夢か現か幻か・・

f3b149be.jpg『眠り姫』(監督:七里圭 出演:つぐみ、西島秀俊、他 原作:山本直樹)

映画サイト「みんなのシネマレビュー」でお世話になっている、なるせたろうさんの紹介で週末に下北沢で上映された『眠り姫』を観ました。

ヴィム・ヴェンダースの『夢の果てまでも』で登場する、自らの夢を映し出すことができる機械があったらこんな風景が見えるのかもしれないなぁ。

その映像は、心の奥底では知っていて馴染み深いのに現実ではない景色、心の中と現実の間のうすボンヤリとして曖昧で、誰も踏み込む事のできない圧倒的に孤独な空間を思わせました。

劇中、深くて果てしない霧の中をゆらゆらと歩く影の映像を見た時、ふいに何やら心をグイっとつかまれて泣きそうになりました。「ああ私も、何処にも辿り着く事のできないこんな広野を歩いた事がある」と。

会話のシーンにちょっと違和感がありましたが、山本直樹さんの漫画の雰囲気は出ていたのでそこは好き嫌いなのかもしれません。上映に合わせて生演奏した室内楽団カッセ・レゾナントの音楽も良くて、とても素敵な映画でした。

「ひとつの思い込みから解放されて、また次の思い込みに捕らわれる。」
そんな台詞にはちょっと目眩がしました・・・。

  
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